9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
二章 婚約破棄しかない
セシリアはその足で、自室を目指した。

つい先ほどまでは正妃という立場だったため本宮に自室があったが、エヴァンとまだ正式に結婚していないこの頃は、たしか離宮の隅にあったはずだ。

夜会の催される今日は、そこかしこで侍女たちがせわしなく作業をしている。

この日はこれまで七回体験してきたが、先ほどのようにエヴァンにこっぴどく拒絶されたため、一度も夜会には参加したことがない。

何度目かまでは、ひとり自室で泣きじゃくったものだ。だが、エヴァンに冷たくされるのに慣れてしまって、もはや何ひとつ精神的打撃はない。

必要最小限の家具があるだけの、王太子の婚約者のものとは思えないほど質素な部屋で、ベッドに腰かけ物思いにふける。

(どうしたらいい? どうやったらエヴァン様を救えるの?)

どんなに頑張っても死んでしまうエヴァン。

愛される努力をしても無駄だった。聖女として祈りを捧げても無駄だった。

セシリアにもうできることは残されていない。

それでも、この最後のやり直し人生で、どうしてもエヴァンを救いたい。

だがどんなに思い悩んでも解決策は思い浮かばず、セシリアは図書館に向かった。

広い王城内の忘れられたような場所にある図書館は、蔦の絡まる石造りの古い建物だ。

エンヤード王国最大の蔵書数で、“知識の泉”という異名を持つ。

とはいえ、文官や研究者などがたまに利用しているだけで、人がいることはほとんどない。
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