アラ還でも、恋をしていいですか?
エピローグ



「ほらほら、誠一(せいいち)。父さんはこっちだぞ!」
「むぅ〜」

よたよた、と小さな足で危なっかしく歩くけど…決して敬一は手助けしない。過剰な保護は成長を妨げる、と言ってたから。

「よーし、よくやった!頑張ったな」
「きゃあ!」

息子を抱き上げた敬一は、抱き上げてくるくる回る。きゃっ、きゃ、と誠一は嬉しそうに笑い声を上げた。

(本当に夢みたい…こんな日が来るなんて)

日曜日の昼すぎ。近所の公園に一家で遊びに来ていた67歳の私は、未だに夢見心地だった。


あの日、章は離婚届を素直に書いた。
即座に役所に提出し受理され、離婚が成立。私はすぐに敬一の実家へ移り住んだ。
敬一が開いた料理屋は実家を改装したお店で、そこそこ繁盛し生活には困らない。開店と同時に私と敬一は入籍をした。
身内だけで簡単だけれどパーティーをして…敬一が私の妹まで招いてくれたおかげで、長年のわだかまりが解け仲直りができた。

慰謝料をもらった元夫の行方は知らない。
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