Rain or Shine〜義弟だから諦めたのに、どうしたってあなたを愛してしまう〜
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 瑞穂が風呂に入ったタイミングで、恵介はある人物に電話を入れた。呼び出しのコールが鳴り響く中、怒りを抑えるため胸元に拳を押し当てる。

『もしもし、澤村(さわむら)弁護士事務所です』

 なんて胸糞悪い声だ。電話に出たのは崇文本人だった。

「お久しぶりです。覚えていらっしゃいますでしょうか、瑞穂の弟の松島(まつしま)恵介です」
「……あぁ、恵介くんでしたか。お久しぶりですね。会ったのはたった一度でしたが……何かご用ですか?」

 暫しの沈黙が流れ、含みのあるような言葉が返ってくる。

「えぇ、実は仕事で近くまで来ているんです。前乗りしてやってきたもので、せっかくだから瑞穂に案内をしてもらうと思いましてね。月曜日から調査が入るので、明後日まで私の宿泊しているホテルを起点として、たっぷり観光をしたいんですよ」
『……それで?』
「今日から三日間、瑞穂をお預かりしたいと思いまして」
『あはは! それは困りましたね。私は彼女がいないと何も出来ないんですよ。食事の準備も洗濯も掃除もさっぱりです。彼女にはやることがありますし、もし観光をするにしたって家からでも出来ますでしょう。なんなら私が同行しましょうか?』

 恵介は苛立つ気持ちを抑えつつ、作り笑いを作って心を鎮める。
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