Rain or Shine〜義弟だから諦めたのに、どうしたってあなたを愛してしまう〜
5
 朝陽が柔らかな明るさを部屋へともたらす。頭の下にはやや硬い感触……腕枕だなんて久しぶり。瞼をゆっくりと開けた瑞穂は、恵介の寝顔を見て一瞬驚いたものの、昨夜のことを思い出して胸が熱くなる。

 まさか恵介も同じ気持ちでいてくれただなんて、未だに信じられなかった。それでもあんなに何度も意識が飛ぶくらい愛し合ったのは、初めての経験だった。

 足を動かそうとすると股関節が痛み、思わず笑ってしまう。

「何笑ってるの?」

 突然声がしたので顔を上げると、恵介がニヤニヤしながら瑞穂を見ていた。

「あっ……起こしちゃった?」
「大丈夫。それより体は平気? ちょっとハメ外し過ぎちゃったからさ」
「うふふ、それで笑っちゃったの。股関節がすごく痛いから」
「あぁ、なるほど。だってようやく瑞穂の気持ちがわかったら、我慢なんて出来るわけがない」

 恵介は起き上がると、瑞穂の掛け布団を取り去る。それから眉間に皺を寄せた。朝日の元で改めて見てみると、瑞穂の体の痣がどれほど酷いものかわかる。

 その様子に気が付き、瑞穂は苦笑いをした。

「自分で見ても酷いなって思う……だから恵介に見られるのも、本当はすごく辛い……。キレイな肌じゃないから……」

 恵介は瑞穂の肌に指を滑らせる。

「殴られるの?」
「うん……大抵は床に叩きつけられてから殴られる。それから蹴られることが多い……」

 瑞穂が話し終えると、恵介は彼女体に覆いかぶさり唇を重ねる。きっと私の言葉を彼が飲み込んでくれたのね……だってまた自分を卑下するようなことを言ってしまいそうだったから……。

「ありがとう……恵介……」

 すると恵介の唇が、ゆっくりと下りていく。瑞穂の体の痣の一つ一つに恵介のキスが降り注いだ。

 まるで治療みたい。心地よさが勝って、痣の痛みも心の傷も吹き飛んでしまいそうだった。
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