Rain or Shine〜義弟だから諦めたのに、どうしたってあなたを愛してしまう〜
エピローグ
 あれから崇文の事務所へ移動し、今後について話し合いをした。とりあえず離婚歴にサインをさせたが、同じことを繰り返さないためにも裁判をすべきだと恵介は言った。だがもう関わりたくない瑞穂は、離婚出来ればそれでいいと言ったのだ。そのため、恵介が用意した示談書にサインをさせるに止まった。

 話し合いの後、恵介は眉間に皺を寄せていたが、瑞穂が決めたんだからと母親に宥められ、渋々納得していた。

「それにしてもどうしてお母さんが?」
「今朝恵介から電話が来たのよ。事情を知って、居ても立っても居られなくなって、慌てて新幹線に飛び乗っちゃったわ。もう、瑞穂は昔から我慢ばっかりなんだから! ちゃんと相談しなさいよ」
「うん……ごめんなさい……」
「じゃあお母さんはフラメンコのレッスンがあるから帰るけど、本当に大丈夫なの?」

 荷物整理を手伝うと言われたのだが、引っ越し業者に頼むからと言って断った。それに大型家具は持っていかないし、元々荷物も少ない。そのために母親を引き止めるきにはなれなかった。

 それから母親は二人を見てニヤッと笑う。

「お父さんが聞いたら腰を抜かすでしょうねぇ。まぁ再婚まで時間はかかるから、ちゃんと説明してあげなさいよ」
「わかってるって」
「はいはい、じゃあ瑞穂も早いうちに帰ってくるのよ。部屋はそのままにしてあるんだから」
「ダメだよ! 瑞穂は俺の部屋に引っ越すから!」
「えー! 久しぶりに親子水入らずって思ってたのに!」
「時々遊びに行けばいいだろ⁈ 俺だって瑞穂と毎日イチャイチャしたいんだよ!」

 二人の会話の意味がわからず、瑞穂は混乱した。

「ちょ、ちょっと待って! どういうこと?」

 すると母親はニヤニヤしながら恵介を小突く。

「だって電話で恵介が『俺が瑞穂を幸せにしてもいいかな?』って」
「母さん!」
「まぁまぁいいじゃない。お母さんは賛成よ。昔から二人は姉弟以上に仲が良かったからねぇ。なんかこうなるような気もしてたし。あっ、そろそろ新幹線の時間だわ! どちらの家に行くかは瑞穂に任せるから」

 そう言い残して、母親は帰って行ってしまった。
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