いい歳をして、、、と自分を卑下する日が来るとは思わなかった。

 あの日、彼女の夫と妻 美郁(みふみ)が突然、単身赴任先のマンションに現れた。
 彼女の夫の素行調査で、俺たちのことがバレて、美郁を伴って来たということだった。

 美郁に、なんと言っていいのかわからずに、頭の中は真っ白だった。前田希美の夫へは、言えた。
 彼女を愛していないこと。
 この関係は身体だけの関係。

 俺はひどい人間ですって、言っているようなものだった。
 それを自分の妻の前で言わねばならぬ。
 一番知られたくない人に知られてしまう、この時。

 彼女の夫のせいでも何でもなく、ひとえに身から出た錆だ。

 若い頃は、一夜限りの情事や、将来がないことを前提に後腐れがないような付き合いばかりをしてきた。
 結婚願望など、小指の先ほどもなかった。

 前田希美とは、、、どういうわけか、利害の一致のような感じで、関係が始まった。
 相手も結婚していたし、お互いに嫌いではなかったが、群を抜いた好意もなかった。
都合がいいセフレだったのだ。

 ほぼ、あちらから誘いが来る。
 自分が見境なしに、女と遊んでばかりの男だとは思わないが、人が恋愛に割く時間をくだらないと思い、自分の欲のみでしか付き合わなかったような、最低の男だ。
 もちろん、前田 希美とそういう関係になっても、それ以外にも女はいた。

 ただ、仕事がらみの鬱屈した時は、手近に同じような環境にいた彼女を利用した。
 八方塞がりの、どうしようもないしがらみの中で、持って行き場のない気持ちを、男の欲を、自分勝手にぶつけられる相手、前田希美にぶつけた。

 そこには、美しい感情など欠片もなかった。
 感情のまま、ぶつけて、欲を吐き出して、おしまい。。。

 一緒に朝を迎えたことも、甘ったるしく、別れを惜しんだこともなかった。