本当は
 日本を出て2年ほどした頃、少しだけ、俺に対して平静を取り戻した礼から、時々メールをもらうようになった。

 美郁が念願の小説家デビューを果たしたらしい。
 それを機に出版社を辞めて、翻訳の仕事をしたり、頼まれた雑誌のエッセイを書いたりと、文筆業に勤しんでいると。

 よかった。
 それは美郁の夢だったから。
 息子も、保育園で逞しく育っているらしい。叔父さんも叔母さんも礼自信も、甘やかすばかりで、美郁が困っているとも書かれていた。

 息子の画像も送ってくる。
 美郁が、俺の生活の邪魔にならないのなら、送っていいと許可してくれたと、礼は書いていた。

 多分、俺の女性関係を思ってのことだろう。
 心配はない。
 自分で機能障害を起こしたのではないかと、思うくらい、いや、その前段階でそういったことに、全く興味がなくなってしまった。
 この地の悪友から、遊びに誘われたり、飲みに行ったバーで、女性たちに意味深なメッセージをもらったりするが、気持ちが揺らぐことはなかった。

 男としての自分の卑劣さを、許すことができない自分がいた。

 殊更大袈裟に、美郁や子供に義理立てをしているわけでも、何でもないのだが。
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