頭の中が真っ白。
まさにそういう状態だった。

 私たち夫婦、決して意思の疎通が上手く行っているとは言えない夫婦だとは、わかっていたが、それでも、央さんの不倫という背徳行為は思い浮かばなかった。
 央さんは女性経験が、豊富な人だろうとは思ったいたが、、、まさか、不倫をしているとは、微塵も疑わなかった。
 いや、そんな風に思いたくなかっただけかもしれない。
そんな話になるのが怖くて、央さんと面と向かって、夫婦、家族の話ができなかっただけかもしれない。

 手紙の差出人からは、電話をくださいと書いてあったが、すぐに電話をできるはずもなく、私はたっぷりと悩み、後のことを考えて、用心して、公衆電話から連絡をした。

 落ち着いた声の方だった。
 二人のことは、始めは相手が誰だかわからなかったが、随分と前から関係があったとわかっていた、、、と。
 しばらくして、そういうこともなくなったと思っていたのに、ここ2、3年でまた関係が始まったことに気づいた。

 探偵を雇って調べさせたら、央さんがヒットしたらしい。
 ただし、決定的証拠が中々出ないので、二人が会う日に央さんのマンションに乗り込もう、と言われた。

 嘘を言っているようには思えなかった。
手紙にも自分の身元をはっきりと書いてあった。

 ただ、そうですか、許せませんね、それは、、、と、即答できない何かが自分の中にあった。
 私は、穏やかに、努めて穏やかに相手に言った。
しばらく、、、2、3日考えさせてください。必ずお返事はしますから、、、と。

 相手はくれぐれもご主人にこのことは言わないように。誰にも知られていないままの方が、証拠を掴めるので、と力説された。
 それを約束して、次の電話の日程も約束して、私の手の汗でじっとりと濡れた受話器を元に戻した。