エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
ピンチを救われる

(あん)()ちゃん、今日は本当におめでとう」

結婚披露宴がお開きになり、会場から退場する際にブルーのカラードレスを身にまとった新婦に声をかける。

六月中旬の日曜日の今日は、従姉である杏奈ちゃんの結婚式。チャペルで永遠の愛を誓う様子は感動的だったし、笑顔の絶えない披露宴もとても素敵だった。

「ありがとう。聞いたよ。縁談がまとまりそうなんだって? 次は美桜ちゃんの番だね」

杏奈ちゃんが艶やかな唇を緩めてフフフッと笑う。

二歳年上の杏奈ちゃんとはお互いの家に泊まり合うほど仲がよかったけれど、成長とともに会う機会が減っていき、今では親戚が集まるお正月に顔を合わすくらい。

年に一度しか会わない杏奈ちゃんが、縁談について知っているのに驚いたものの、両親がペラペラしゃべったのだとすぐに予想がついた。

「私はまだまだだよ」

口が軽い両親にあきれつつ、首を左右に振る。

「照れなくてもいいのに。結婚が決まったら教えてね」

私のうしろには、退場を待っている招待客が控えている。新婦と長々と話し込むわけにはいかない。

「う、うん」

結婚について否定できないまま返事をして披露宴会場を後にした。
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