初恋幼馴染みに求婚されました
二人の心の内
久しぶりに踏み入れた庭は秋の色と匂いが広がっていた。
両手を広げ、空気いっぱい胸に吸い込む。

それから縁側のすぐ下に円状に植えてあるチョコレートコスモスの前に腰を下ろし、花びらを撫でた。

コスモスの仲間のチョコレートコスモスは、名前の通りチョコレートの香りがほのかにする花だ。

それはチョコレートやバニラに含まれているバニリンという成分が含まれているためで、花弁の色も黒っぽい茶色や赤茶色でチョコレートっぽい。
加えてシックな見た目はコスモスの大人バージョンという感じがして素敵だ。
チョコレート好きにはたまらない花である。

「チョコレートコスモスだっけ?」

いつの間に庭に出て来たのか、正君が私の隣に屈み花に顔を近付けた。
その横顔が少し宗君に似ていて、息苦しさを思い出す。
ハッと視線を逸らしてしまった。

「うん」

「可愛い名前だよね。この花言葉は何?」

「“恋の終わり”他には“恋の思い出”」

正君は何気なく聞いただけ。

だが、今の私にピッタリ。
タイミングが良すぎて嫌になる。

正君は私の心情を察して頭をポンと撫でた。
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