8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
地盤沈下と小さな聖獣

 ベンソン伯爵は焦っていた。
 オズボーン王国では現在、鉄鋼石と石炭の需要が高い。各地で、地質調査と称して、火薬を使って岩盤や土を爆破し、鉱脈を明らかにする調査が行われた。
 鉄または石炭を含む土壌だと確認されれば、国から採掘のための補助金が支払われるのだ。

 ベンソン伯爵も地質調査を行い、鉄の含まれた地層を発見した。
 鉄は赤土に含まれることが多いのだが、ベンソン伯爵領で見つかったものは、黒っぽい固い岩石だった。鉄の含有量が、他の地方で採れる鉄鋼石よりも多く、彼は期待に胸を躍らせた。

 オスニエルに報告すると、すぐさま採掘場を整備するための補助金が下り、とんとん拍子で採掘場が完成したのだ。

 しかし、採掘を始めて半年もすると問題が起こる。

 当初順調に採れていた鉄鉱石は、思いのほか早々に枯渇してしまったのだ。これでは採掘のための投資の回収もできない。躍起になって採掘を続けているが、ただやみくもに掘り進めるだけで、成果が出ていなかった。

「ええい。一体どうしたというのだ。あんなに多くの鉄鋼石が取れていたのに……うわっ」

 突然、地面が揺れる。窓ガラスがカタカタと鳴り、天井のシャンデリアが揺れる。しかし、物が倒れるほど強い揺れではなく、ベンソン伯爵は、床に手をつき、揺れが収まるのをしばらく待った。

「また、地震か……」

 オズボーン王国は大陸の中心部にある為、地震は少ない。その中で比べれば、ベンソン伯爵領は多い方だとはいえ、平均して月に一度程度だった。
 しかしここのところ、格段に増えている。

「不吉なことが起こらなければいいが……」

 そうつぶやいた途端に、先ほどよりも大きな揺れが襲ってきた。
 揺れは一分とかからず収まった。しかし、遠くの方で何かが崩れるような音がした。
 ベンソン伯爵は、屋敷内に異常がないか確認したのち、私兵に鉱山周りの見回りをするように伝える。
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