8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
ふさぎ込む心と引き出す心

 アイラが違和感に気づいたのは、朝食の席でだった。
 いつもなら同席するはずのオリバーがいない。部屋に迎えに行ってもいなかった。
 オロオロしたままシンディを問い詰めていると、フィオナが寝室から出てきてアイラを抱きしめた。

「母様、オリバーは?」
「オリバーは具合が悪くて、母様の部屋で寝ているの。今日は学校を休ませるから、あなたは行って、先生やお友達にも伝えてあげてくれる?」
「具合が悪いの? 私、オリバーに会いたい」

 フィオナには止められたが、アイラはせめて顔だけ見たいと言い続け、フィオナの部屋をのぞいた。

 オリバーは上半身起き上がっていたが、ぼうっとしていた。アイラに気づかないのか顔も上げない。目の前にある食事にも全然手を付けていないようで、ただ、斜め下の一点をじっと見つめている。

「オリバー……」
「アイラ、とにかく行ってらっしゃい。オリバーには母様がついているから心配しないで」
「……うん」

 アイラは後ろ髪を引かれる思いで、城を出た。
 いつものように馬車に揺られていても、変な気分だ。いつだってオリバーと一緒だったから、アイラには不安なんて何もなかった。ひとりになるだけで、こんなに心細くなるとは思わなかった。

「あああー。いや。どうしちゃったの、オリバー」

 普通の病気なら、オリバーはアイラのことを無視したりしない。返事もできないくらい憔悴しているというならば、なにかがあったのだ。昨日。

「あとでドルフをとっつかまえて聞かなきゃ」

 ひとりで散々しゃべっていても、相槌を打ってくれる人がいない。アイラはなんだか泣きたい気分になってきた。

「ううう。一体オリバーに何があったの。こんなこと、今まで一度だってなかったのに」

 アイラはパンとほほを叩き、唇をかみしめる。

「泣いたりしないんだから! 私がオリバーを助けなきゃ!」


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