秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
第五章

 夜会から一週間が経った。
「いってらっしゃい」
 私はいつも通りアズフィール様と一緒に朝食を取り、食堂の前で公務に向かう彼を見送る。
「ああ、いってくる」
 アズフィール様は一週間後に十八歳の誕生日を控えて、少し忙しそうだった。
 エイル神聖王国では十八歳で成人となる。第一王子であるアズフィール様は同じ日に正式な王太子であることを国内外に宣明するお披露目の儀式──立太子の礼を行う。立太子の礼は、各国の要人らも多く招き、大々的に催される。その準備などで、アズフィール様はもとより、王宮内も忙しなさを増していた。
 私はアズフィール様の背中が廊下の角に消えると、玄関に向かって歩き出す。だが、目的は外出ではない。
 今日は珍しく、鍼灸の施術の予定が一件も入っていなかった。ならば実家に顔を出そうかと思えば、祖父は終日の仕事。祖母は友人宅にお呼ばれだそうで、こちらも不発に終わっていた。
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