私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
第2章 接近
「紗絵、俺から誘っといて何だけどさ」

「うん」

「俺のこと、そんなに信用して平気?」

「え?」

「何だろ、いろんな順番すっ飛ばしてると思うけど、気にならないのかなって」

「・・例えば、何かな?」

「何って・・」

「蓮斗」

「ん?」

「蓮斗の横顔、なんかドキドキする」

「茶化すなよ、紗絵」

「・・気にならないことは無いけど、自分の勘を信じてるから。蓮斗に違和感、感じないし」

「違和感?」

「うん。キスした時に分かる。あ、このキス、違和感ある・・って。この人じゃない・・って」

「俺は、合格だったわけ?」

「合格っていうか・・。今回は、自分からしたくなったくらいだから」

「そうだった。紗絵に抑え込まれたんだった」

「だって・・したかったから・・」

「あ、ここかな? 着いた」

え、もう?
話していた20分は本当にあっという間で、一瞬で過ぎた気がした。

「ありがとう。少し待っててくれる? 10分もあれば出て来れるから」

クルマを降りようとドアに手を掛けると、彼が反対の手首をつかんだ。
そして、覆い被さるような格好で顔を近づける。

「もう一回、ちゃんと確かめた方がいいよ」

「ちゃんと・・?」

「俺といて、本当に平気? 止めるなら、今だよ」

近くで見つめられて、違和感どころか、胸がきゅんとなる。
唇が触れ合うと、さらに鼓動も早くなった。

「止めるって言ったら・・」

「え?」

「止めるって言ったら、帰してくれるの?」

「・・分かんない。多分、無理」

「蓮斗・・」

「紗絵ごめん。もうこのまま、連れてってもいい?」

彼はハザードランプを消し、クルマを出した。

「紗絵、明日の昼まで、このまま一緒にいてくれたら嬉しい。バカなこと言ってる・・って思うかもしれないけど、俺、紗絵に運命感じてるんだ」

運命・・?
そのフレーズに、胸の奥がきゅっと切なくなって涙が浮かんだ。

「わっ、紗絵どうした?」

「蓮斗が運命とか言うから・・」

「運命は運命だろ」

「だったら・・。蓮斗の運命が本当か、もう一回確かめてみて・・」

信号が黄色から赤になるのを確認して、私は彼を引き寄せ、唇を重ねた。
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