私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
第3章 決意
客先でのミーティングからオフィスに戻り、ノートパソコンを戻して帰ろうとしたタイミングで、フロアの廊下を横切るさつきを見つけた。

小走りで廊下に駆け寄り、声を掛ける。

「さーつき、お疲れさま〜」

「紗絵ちゃん! その後、具合どう?」

「うん・・大丈夫。手術、することに決めた」

「そっかー。どれくらい休む? いつから?」

「1ヶ月くらいかな。手術の日は、次に病院に行った時に決めてこようと思ってる」

「日にち決まったら教えて。いろいろ手続きあるから、手伝うね」

並んで歩いていたさつきが、突然立ち止まる。
急に真面目な顔をして、私の手をつかんだ。

「さつき?」

「紗絵ちゃん、私がこんなこと言うのもどうかと思うけど・・」

「え、何?」

「紗絵ちゃん、蓮斗くんと早く結婚しなよ」

「え!? 結婚?」

「手術することになったら、家族じゃなきゃできないことがいくつもあるんだよ」

「家族じゃなきゃ・・できない・・こと?」

「そうだよ。どんなに好きでも、どんなに大切にしてても、彼氏じゃダメなの。
ちょっとした手続きでさえ、家族じゃないとできないから」

「そう・・なんだ」

「蓮斗くん看護師さんだから、そういうのよく分かってると思う」

言ってくれればいいのに・・と、一瞬思ったものの。

言えないから言わないんだ・・。
そう思い直した。

「蓮斗くん、言い出しづらいんじゃないかな。
このタイミングで結婚のこと言い出したら、何だか手術のために結婚するみたいだし、それに・・」

「それに?」

「結婚するってことは、その延長上に子供も考えるから、2回の手術が必須になるでしょ? でも子供のことが無ければ、手術は1回で済む。
紗絵ちゃんの身体の負担を思うと、もう蓮斗くんからは何も言えないんじゃないかな」

そう・・なの?
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