私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
第4章 過去
お財布とスマートフォンをバッグに入れ、急いで大通りに出る。
すぐに空車のタクシーがつかまり、病院に向かった。

さっきの電話の内容がリフレインされる。

『坂本さんが、患者さんをかばって階段から転落しました。
その際に右腕の骨折と、頭部打撲があり・・・・おそらく、頭部打撲が原因で意識が混濁しています』

蓮斗・・。
どうして、どうしてそんなことに・・。

タクシーの後部座席で、膝がガクガクと震えた。
もしかしてこのまま・・。

そんな考えが浮かんで、ゾッとした。

「お客さん、病院に着きましたよ」

運転手さんに声を掛けられ、急いでタクシーを降りる。
さっきの電話で指定された病棟に向かった。

「あの、坂本です。主人がこちらにいると聞いて・・」

「坂本さんの奥さまですね、こちらへどうぞ」

病棟にいた医師に連れられ、病室に向かう。
ガラガラッと病室のドアが開けられ、私は目の前の光景に息を飲んだ。


そんな・・。
嘘でしょう?


点滴や酸素のチューブ、そしてさまざまな機器に囲まれて、彼はベッドに横たわっている。

「電話でもお伝えしましたが、階段の踊り場でバランスを崩した患者さんをかばって・・。
患者さんはケガも無く無事だったんですが、坂本さんが転落してしまったんです」

「・・・・そうですか」

「ただ、脳内の出血は無いので、頭を打ったショックで意識が混濁しているのだと考えていますが、しばらく様子を見る必要があります」

「分かりました・・。あの、私、今夜はここにいて良いのでしょうか?」

「あと2時間ほどなら構いませんが・・夜間はお帰りいただくことになります」

説明してくれた医師が申し訳なさそうに言う。
病院の規則なのだから、それは仕方がない。

「分かりました。時間まで、ここにいさせてください」

「じゃ、何か変わったことがあれば、ナースコールで呼んでください」

「はい・・」
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