悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。

知りたい気持ち





 翌日、結局その日のうちにルイゼルトには会えないまま、連れてこられた部屋でファウラは監禁されていた。謝りたい、その気持ちがあるというのに、次から次へとやってくる書類の山に、どちらかと言えば休みたいという気持ちが這い上がってくる。

 そんなファウラの気持ちを先回りして、自室ではなく図書室へ連れてきて正解だったと、憔悴する彼女をユトはやれやれと見つめていた。

 終わるまでは外に出さないと言ったのに対して、根性だけで何とか出ていかない彼女には関心するしかない。

 城での生活も慣れてきたファウラに攻めてきたのは、レゼルト王国とクラネリシア国との諸々な承諾書類の軍隊だった。王宮で暮らしていた頃も、文字との睨めっこをする機会は数える程度しかなく、街での生活に慣れ親しんだ彼女には無縁の仕事だった。

 全ての書類の内容に目を通し、署名していくだけの作業だが、慣れない作業に手こずるばかり。かと言って、内容を読まずに署名すると、ユトが恐ろしい笑顔を浮かべてくる。



(うう……街の結婚みたいに、教会での互いの名前を碑石に刻んで終わりだったら良かったのに)



 ややこしいしがまりもなく、愛する者同士の誓いの言葉で婚儀は簡潔に終わる。ただそれは街の住民の話であって、王族の婚儀には通用しない。

 しかも他国との王族と結ばれるとなれば、国同士の結びつきを明確にしておかなければならないのだ。それを怠ってしまえば、頭が切れる人間に逆手を取られる可能性も出てくる。

 互いの国の利益の為に今は辛抱するしかないと、ファウラはとにかくペンを握りしめた。








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