それは手から始まる恋でした
ドS御曹司 vs 可愛い同級生
 引っ越すために私は部屋を片付けていた。荷造りは業者にお願いできると言われたが、ある程度は自分でやることにした。

「紬、これいる?」
「いらない。捨てて」
「了解」

 高良の家に引っ越すことになったことを港に伝えると、港は驚きつつも引っ越しの手伝いをすると言って私の部屋に来た。

「ありがとう。港が手伝ってくれるとはかどる」
「なんか寂しいな。もうここには来れなくなるなんて」
「うん。私もなんだか寂しいよ」
「やっぱり僕の家に来たら? そのドS御曹司は絶対にやめた方がいいって」
「分かってる。でも、もう後戻りできないんだ。当たって砕けて終わるのは分かってるのに辛いね」
「紬が好きな人と結ばれたらそれでいいと思ってたけど、そんな奴なら僕は反対する」
「珍しいね。港っていつも私に好きな人ができた時、応援してくれてたじゃん」
「うん。でも紬は彼氏ができないだろうなって思ってたから」
「何それ。酷い」
「だって好きとか言いながら全然何もしないで妄想だけで一人で浮かれたり落ち込んだりしてたから」
「あはは。確かにそうだったね。今もほぼ変わらないけどね」
「ほら、やっぱり。僕の家に来なよ。狭いけど二人でも十分に住めるって。ちょっと荷物は減らしてもらう必要がありそうだけど」
「ありがとう。本当に大丈夫。追い払われた時の為にちゃんと引っ越し費用は貯めるから」
「僕ならいつでも紬を受け入れるよ」
「港が彼女いなかったらちょっとの間お世話になるかもね」
「そうじゃなくて」
「ん?」
「いや、別に。これ終わったら部屋飲みしたいなって」
「いいよ。明日も休みだし。最後になるしね」

 夕方には大まか荷物を整理できた。港には下着を見られても恥ずかしくない。こんな貴重な男友達はこれからできる気がしない。
 私たちは近所のスーパーでお酒を買い、一緒におつまみを作り、早い時間から飲み始め、あっという間に時間が過ぎていた。

「あ~本当港ってハイスペック。顔良し性格良し料理もできて綺麗好き。大学は私と同じなのに大手メーカー勤務。高収入。どれか1つ分けてよ」
「あはは。紬は鉄壁女子だよね」
「鉄壁って何? 壁作んなくても男が寄ってこないの。港もその一人じゃん。今だから言えるけど昔一瞬だけだけど港っていいなって思ったんだよ。でもさ、彼女いたし私なんか相手にされないからそんな気持ち吹っ飛ばしたけど、正解だった」
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