【番外編】円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
番外編2. レッドリザードの尻尾
 卒業式と卒業パーティーを来週に控え、学院内はちょっとした「浮かれモード」になっている。

 それぞれ就職先や進学先が決まり、最後のチャンスとばかりにそこかしこで告白が行われていたり、最後の卒業パーティーのパートナーの申し込みをしている生徒たちの様子を、青春してるわねぇと、どこか達観しながら眺めているわたしの就職先は「王太子妃」で、卒業パーティーのパートナーはもちろんレイナード王太子殿下だ。

 卒業後に仕上げのお妃教育を受けて、3か月後に結婚式を挙げたらついにレイナード様と夫婦になる。
 レイナード様は、卒業式の翌日に結婚したいと主張し続けたのだけれど、準備を考えるとさすがに急すぎるということで3か月後ということになった。


 学院のカフェテラスで、親友のリリーとマーガレットと一緒にランチを楽しむのも残り数回だと思うと感慨深い。

 リリーがリリアン・Dというペンネームで書いた処女作『婚約破棄された悪役令嬢は山賊に恋をする』は、貴族の奥様と若者の間で大人気となり、二作目の『王太子は悪役令嬢に二度恋をする』が出版されたところだ。

 リリーはこのまま文筆業に専念することになっていて、レイナード様の側近として王城勤務することになっているカインの仕事が落ち着いた頃に結婚するつもりらしい。

 マーガレットは卒業パーティー用のドレスの注文が殺到して数日前までは目の回るような忙しさだったようだけれど、全ての注文を納期通りに完成させてようやく一息ついたところだ。
 卒業後は王都で人気のドレス店にデザイナー兼針子として就職することが決まっていて、その前にしばらく実家に帰る予定になっている。

 これまでパーティーというものに一切出席していなかったリリーが、卒業パーティーに限ってはカインと共に参加することを表明し、わたしのドレスもリリーのドレスももちろんマーガレットのお手製で、とても楽しみにしているのだけれど…。

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