憑かれた僕が彼女を助けるまでの備忘録
彼女のゆくえ

「だ、大丈夫ですかっ!?」

 気づくと知らない男性がそばにいて、おろおろと粟を食った様子で僕を見下ろしていた。

 少女の泣き声が聞こえる。それを宥めるように、「こわかったね」と声をかけるイロハの声も。

 僕はうつ伏せの状態から頭を持ち上げた。目と鼻の先に車のバンパーがあり、ぎょっとなる。車体からは白い蒸気らしきものも上がっていた。

 いや、ていうか……。

「い。生きてるのか?」

 上体を起こしてその場に座り込んだ。体が快適というべき軽さを取りもどしている。

頭や胸、手足に怪我がないかを確かめた。運転手の男性も一緒になって僕の体の無事を確認した。念のため、病院で診てもらうことも半ば強制的に勧められた。

 運転手の男性がいったん車に戻り、どこかに電話をかけていた。話している内容から警察に事故の報告をしているのだと分かった。

「あれ、彩羽は?」

 これまで手に持っていたスマホがないことに、ようやく気がついた。周囲を見渡す。

二メートルほど離れた歩道に黒のスマホが落ちていた。姉妹を押したときに手から吹っ飛んだそれは、液晶が割れて完全に壊れていた。

「そんな……」
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