熱く甘く溶かして
友情が愛情に変わる時
 買い物と夕食を済ませて帰宅すると、時間は夜九時を回っていた。恭介は慣れた手つきでボタンを押して風呂に湯を溜めると、買ってきた荷物をほどき始める。

「俺はこれを片付けちゃうから、先に入っていいよ」
「じゃあお言葉に甘えて……」

 智絵里はそそくさと浴室に向かった。ドアが閉まるのを確認して、恭介は大きなため息をついた。

 今日の買い物の間、恭介は気が気ではなかった。やはり智絵里は人の目を引く。スラリとした体型とキレイめな顔立ち。今日は花柄のワンピースを合わせ、髪は下ろして左側の肩に流していた。

 俺のものとアピールしたくても、無闇に触ることは出来ずにモヤモヤしたが、とりあえずすぐそばを歩くことで周りを牽制し、自分を満足させる。

 高嶺の花と呼ばれていたくらいだし、今もそれは変わっていなかった。

 シャワーの音が聞こえ始めると、恭介の心臓が高鳴り始める。

 智絵里が俺の部屋にいて、これから毎日顔を見られる。彼女は今どうしているんだろうなんて考えなくても、手を伸ばせば届く場所にいるんだ。それがこんなにも安心出来るなんて思わなかった。

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