熱く甘く溶かして
元カノ
 恭介との生活が始まって、一カ月が過ぎようとしていた。朝は歩いて出勤するものの、帰りは心配性の恭介に待ち伏せされる日も度々あった。

「……ストーカー?」
「し、心配してやってんだろ⁈」

 九年の年月が経っても、元々の性格は変わらないらしい。だが離れていた間の恭介を知らない智絵里は、時々不安になったりもした。

 智絵里自身は服飾系の女子大に進み、勉強に専念し、今の会社に就職した。男の人が怖いのに近寄られると不安になり、引越しを繰り返していた。

 実家に戻ることも考えたが、そうすると電車に乗らなくてはならず、今の会社を辞めたくない智絵里は自身が動くことを決めた。

 一人は不安なのに、一人でいることを選ぶしか出来なかった。そんな時に恭介が目の前に現れたのだ。

 彼のおかげで、不安だった心が満たされていくようだった。頑張って強がっていたのに、恭介に頼って甘えることを知ってしまったから、彼がいなくなることを考えるだけで怖くなる。

 恭介は今まできっといろんな女性と付き合ってきたんだろうな。だって女の扱い方を知ってるし、キスだってあんなに上手……そう思うと、見たこともない知らない女性に嫉妬してしまう。

 毎日寝る前に恭介とキスをする。幸せなのに、不安になるのはやっぱり彼のことを好きだからだと思う。

 智絵里はせっかく日比野とカフェでランチをしていたのに、関係のないことを考えてはモヤモヤしていた。

「ねぇ智絵里ちゃん、なんか考え過ぎてる顔してるよ」
「そ、そんな顔してます?」
「してるしてる! もしかして同棲中の彼のこと?」

 指摘され、つい下を向く。
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