熱く甘く溶かして
現実
 早川に呼び出されたのは、同窓会会場からだいぶ離れた場所にある、昔ながらの古い喫茶店だった。今時珍しく喫煙可能な店らしく、店内はタバコの匂いと煙が漂う。

 店に到着すると、奥の方のソファ席で早川と睦月が並んで座って待っていた。恭介と智絵里は真っ直ぐそのテーブルに向かった。

「悪い、道が混んでて遅くなった」
「いや、大丈夫。こちらこそ急に呼び出してすまない」

 恭介と智絵里は、二人の向かいのソファに座る。智絵里は睦月の顔を見たが、先ほどよりは落ち着いているようだった。でも睦月が関係している理由が未だにわからない。

「あの……どうしてむっちゃんがいるの……?」

 智絵里が言うと、睦月は早川の顔を見る。早川から合図を受け、睦月は重たい口を開いた。

「今年の二月、下校時刻が近付いていた時間になって、保健室に一人の女生徒が入ってきたの。すごく青ざめて、体は震えてた。とりあえずベッドに座らせて話を聞こうと思ったんだけど、泣き続けて何も話してくれなかったの。でも明らかに何かがあったんだと思った」

 睦月は話しながら時折両手を握りしめる。

「その様子が普通じゃなかったから、私は最悪の想像をしてしまったの。ゆっくり時間をかけて話を聞いたら……記憶はないけど、体に違和感があるって……。だからすぐに病院に連れて行って、それから早川くんに連絡したの」

 睦月はその時のことを思い出したのか、涙が堪えきれずに嗚咽を漏らす。その背中を早川が優しく叩く。
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