熱く甘く溶かして
策士と協力者
 篠田をオーブに連れて行くにあたり、仕事を手伝うと約束してしまったものだから、松尾は片付けなければいけない事柄が増えてしまった。

 だが仕事をしながらも、頭の片隅で篠田と畑山のことをずっと考えていた。あの鉄壁の篠田が、あんなに取り乱した様子は今まで見たことがなかった。テキパキと仕事をこなし、いつも穏やか且つ冷静、そして先輩・後輩共に受けがいい。その篠田がまさか怒鳴るなんて……。

 畑山ちゃんもだ。あんなにキレイなのに、浮いた話は全く聞かない。男を軽くあしらい、全く興味を示さなかった。その畑山ちゃんが全力疾走する様を初めて見たのだ。

 本当にただの友達か? お互いちょっとくらい恋愛感情ってやつがあったんじゃないか? 考えれば考えるほど、モヤモヤしてキュンキュンしてくる。

 どうにかして二人を引き合わせる方法はないだろうか。畑山ちゃんがあんなに足が速いと思わなかったから、普通に会わせたらまた鬼ごっこが始まるに違いない。

 そこで松尾はあることを思い出してはっとする。ニヤッと笑うと、スマホを持って立ち上がる。それに気付いた恭介が怪訝そうに松尾を見た。

「松尾さん?」
「えっ、あっ、ちょっとコーヒー買ってくる」
「またですか?」
「俺が一日に何本飲んだっていいだろ?」
「はいはい、これ今日中に終わらせたいから早く戻ってくださいよ」
「わかってるよ!」

 松尾はそそくさと外に出ると、ある人物に電話をかけた。

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