お見合い婚にも初夜は必要ですか?【コミック追加エピソード】
1.お見合い婚からそろそろ一年



小さな手のひらに指をあてると、きゅっと握り返してくる。ふんわり微笑むのは生理的微笑という新生児の反射らしい。
私は叫びだしそうになるのをこらえ、声にならない声をあげて悶絶した。
可愛い。赤ちゃんってどうしてこんなに可愛いの!?

「榊、雫さん、よかったら抱っこしてみない」

キッチンからお茶を運んできたのは高晴さんの同僚の日向さん。赤ちゃんのママだ。独身時代お見かけしたときは、黒くて艶々のストレートロングヘアだったけれど、今は少し短めでひとつにまとめている。
今日、私と高晴さんは日向さんのところへ遊びに来ている。生まれたばかりの赤ちゃんを見せてもらい、出産祝いを渡すために。

「いやぁ、まだちょっと怖いです」

苦笑いの私は赤ちゃんに指を掴まれたまま。だって、赤ちゃんの方が離してくれないんだもの。ああ、可愛い。ずっとこうして掴まれていたい。

「首が据わってないんだよな。俺もちょっと不安だ」

私の横で赤ちゃんを覗き込みながら、高晴さんも言う。本当に自信のなさそうな顔をしている。わかるよ、まだ小さくてふにゃふにゃだもんね。壊しちゃいそうなんだよね。
日向さんが「あはは」と明るく笑って、私たちの横に膝をついた。長座布団にバスタオルが敷いてあり、その上に寝かされている赤ちゃんをひょいと抱き上げ、私の腕へ。
ひゃあああ、だから怖いって、怖いんだって!

「首、支えてね。そうそう」

日向さんの指導のもと、温かくてちいちゃな生命をそっと抱っこする。
赤ちゃんは何をされているのかわからないというようにぽけっと私を見上げていた。
近! あったか! なんか甘酸っぱい匂いする! か、可愛い!
駄目だ、語彙力が死滅している。ちゃんとした感想が出てこない。赤ちゃんの愛らしさって、けた違いなのね。この可愛らしさに理由はいらないわ。
うう、でもこの世界に出てきてまだ一ヶ月の生命体を預かるのって緊張する~!
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