秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
不安
 結婚して一ヵ月ほどが経った。真冬の今は外に出るのが億劫になるほど寒く、室内で過ごす時間が格段に増えている。

 陽太が楽しく過ごせるようにと、リビングには大きなクリスマスツリーを飾っている。夜になって灯りを点灯させると、そのたびに目を輝かせながら「ついたー」と歓声をあげて大喜びしている。

 私の実家からの接触は、今のところなにもない。それに安堵して、父の動向はこれまで以上に気に掛けなくなっていた。

 逆に小田切の両親との関係は良好で、お互いに予定を合わせて頻繁に遊びに行かせてもらっている。ここ最近は陽太とふたりで行く機会もあり、それに拗ねる大雅はやっぱりかわいかった。

 顔合わせの場で会えなかった義弟も、先日我が家訪問してくれた。
 写真で見た幼い頃ほどではないものの、大雅とはやはり顔の作りが似ており、性格も同じく気さくな人だった。
 会った早々から私を「お義姉さん」と呼び、陽太のこともずいぶんとかわいがってくれた。

「俺も、いつかは今付き合っている彼女と結婚しようと思ってるんです。彼女、ちょうどこういうナチュラルな雰囲気が好きなんですよ」

 そう言ってリビングをぐるりと見回す様子は、早くも新婚生活を思い描いているように見える。

「ここって、まだ空きあるの」「さすがに兄弟で同じマンションって、距離近すぎじゃないか?」というふたりの仲よさげなやりとりを、微笑ましく見守った。
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