秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
運命的な出会い
 移動中に予約を入れておいたホテルにたどり着き、シャワーを浴び終えるとなんだかほっとした。実家よりも、初めて訪れたこの部屋の方が安堵するなんておかしな話だ。

 父からひっきりなしに電話やメールを受信していたが、放っておいてほしい旨を返した後は電源を落としてしまったから、もう煩わされないでいられる。

 これまで使っていたスマホは明日にでも解約して、番号もアドレスも変えてしまえばいい。父の知っているフリーアドレスを生かしておけば、連絡手段は確保できるから問題ない。
 とりあえず、捜索願を出されない程度にメールを送ればいいだろう。

 突発的な行動だったにもかかわらず、少しも後悔はない。逆にいろいろなしがらみから解放されて、今は清々している。

 挨拶もなく突然会社を退職するのは申し訳ないが、もう二度と戻るつもりはないと開き直る。退職届と謝罪の手紙をしたためて送付する手はずを整えると、すっかり疲れ切った体をベッドに横たえた。


 翌朝、冷静になって考えても、実家に帰る気など微塵も起きない。
 しばらくはここに滞在して心を休めたい。それから部屋と仕事を見つけて暮らしていけないかと、これからの生活に期待を膨らませる。
 都会ならば、なにかひとつぐらい自分にできる仕事があるだろう。

 それに、幸いにも手元には祖母の残してくれた少なくないお金がある。加えて、これまで無駄遣いせずにためてきた自身の貯金も。だから、当面生活には困らない。
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