君が望むなら…
私は今日、結婚をした。

私が愛していない相手。
生きる上で決められた筋書きをなぞらされたどり着いた、私が『結婚をしなければならなかった』相手…

私は姉妹三女のうち次女で、上の姉と常に比べられ、下の妹の手本にと言われて育ってきた。

上流階級ともなれば社交場にも姉妹揃って連れて行かれる。
そしてそこでも常に比べられ、私は陰口を言われ続けていた。

なぜ私に自由はないのだろう?

私は貴族になんて、生まれたくなかった…



「……ということですわ。お願い出来ますかしら…?」

夫となった彼と二人きりの部屋で、これからのことを話していた。

「ああ、君の望むようにしよう。」

穏やかな笑みを絶やさず、私だけでなく誰を相手にしても穏やかに受け答える彼。

彼が本当は何を考えているのか全く分からない。

彼も貴族。
社交のために繕うことくらい、いくらだってしているに違いない。
今だって望まぬ相手である私に、心の中ではうんざりしているに違いないのだから。

「…それから私の寝室を、貴方の寝室と繋いである隣の部屋に頂きたいと思います。」

ちらりと物の置かれたその部屋の方を私は見る。

「しかし、そこは物置になっているんだ。それでは君があまりにも…」

困惑の表情でそう返す彼に、私はきっぱりと答える。

「私と無理に夜を共にする必要など、ありません。私はただ、貴方にとって定められた相手だっただけですもの。せめて周りには仲が良いよう振る舞わなくては貴方の威厳に関わります。ですからこのお屋敷の方々には外部に公言しないよう、私のほうから口止めを。」

愛されることが無い相手に望まれないくらいなら、いっそなるべく顔を合わせずに済む方が良い。
それが私の下した答えだった。

「…君がそう望むなら、アネア…」

彼は眉を下げて穏やかにそう言った。
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