三羽雀──本来は三羽烏と呼ぶべきだが、彼女たちは悠々と空を飛ぶ烏というより、地を歩き回るお喋りな雀である。鳥籠の中で大切に育てられた雀もいれば、小さな体で大空を飛び回る雀もいるし、どんな境遇にあっても強くその翼をはためかせる雀もいる。そんな三羽の雀が集まったとき、どのような話がされるのだろうか。
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<主な登場人物>
松原春子(まつばら はるこ): 1924年生。軍人一家の令嬢であり女子大学校で家政を学んでいる。大学校に通ってはいるが、恋愛にうつつを抜かして勉強には身が入らない様子。
伊坂幸枝(いさか ゆきえ): 1922年生。「伊坂工業」を営む資産家の令嬢。映画とファッションが好きで、暇さえあれば浅草に通って映画を観ている。
高田志津(たかだ しづ): 1920年生。「高田内科醫院」の一人娘で、併設の薬局で薬剤師として家業を手伝っている。高辻とは許婚にある。
神藤勝俊(しんどう かつとし): 1922年生。音楽学生でホルンとピアノが得意。正義感が強く一途な人格。音楽学校に通うものの、軍楽隊を志望した。
高辻康弘(たかつじ やすひろ): 1915年生。若くして内科医院を開業している。志津とは許婚だが軍医として従軍している期間が長く、会う機会は少ない。
成田清士(なりた きよし): 1922年生。実業家の長男であり、帝国大学で法学を学んでいる。とある俳優に似ていると言われるほどの端正な顔立ちから恋愛沙汰が多い。
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*本作品はフィクションです。実際の人名とは関係ありません(地名等については一部実在のものを含みます)。
*本作品には軽度のアルコール・喫煙・バイオレンスを含むシーンがありますが、それらを助長するものではありません。あらかじめご了承ください。
*本作品は拙作『ショウワな僕とレイワな私』と関係する場面を含みます。同作を併せて読んでいただくと、より本作をお楽しみいただけます。
*感想/コメント等々お待ちしております!
- あらすじ
時は40年代、不況に巻き込まれ、戦争へ突き進む日本の帝都・東京。軍人家令嬢の恋と結婚、資産家の娘の願いと決心、医者の一人娘の迷いと覚悟。そして、多くの女性を惹きつけてやまないエリート法科生の運命──。華やかに、そして粛々と移ろう彼ら彼女らの行く末やいかに。ひとつ空の下、性格や境遇の違う6人の若き男女の想いや生き方が交錯するキュンあり、涙ありの恋愛ヒューマンドラマ。
目次
- 春子の苦悩
- おきゃん娘
- 旋律に導かれて
- 夢の再会
- 運命の導くところ
- 板挟みの感情
- 秘密の談合
- 運命を転換せよ
- 抗えぬ未来
- 覚悟と展望
- 幸枝の信念
- 同族の巡り合せ
- 謎に包まれた少女
- 歪(いびつ)な家族
- 内緒の仕事
- 士官の頼みごと
- 熱狂の冬
- 激務の応酬
- 娘同士
- 病室談義
- 仮面の妙案
- 目に見える悩み
- とある誠実な軍人
- 窮地に響く雨音
- 継母(はは)の逃避行
- 惨め或いは幸福
- 尉官と佐官
- 無期限の取引
- 学生の意志
- 溶ける欠き氷
- 見るべからざる景色
- 懐柔の試み
- 士官の引責
- 芸術と恋の冬
- 煌めく宴
- 迫るその日
- 令嬢対令嬢
- 逃れ先
- 一方的な友人
- 訪ね来る人達
- 無謀な挑戦
- 暫しの別れ
- 志津の決断
- 不憫な娘(こ)
- 大変な急患
- 兄妹(きょうだい)の妹
- 女と令嬢
- 美形の学生
- 許嫁の仕事
- 隠し撮られた写真
- 春の帝都
- 生き甲斐と幸福(しあわせ)
- 三羽の雀と一羽の烏について
- 偶然の出会い
- 新事実の発覚
- 三つの回想談
- 三羽雀、新たな空をゆく