妖怪ホテルと加齢臭問題(天音と久遠)

三代目女将の仕事

三代目の女将になるはずだった
天音は・・・
人見知りでもあり、愛嬌もない。

女将業を自分でやるなんて、
はなから考えていなかった。

幼い頃から、
母や祖母の美女伝説を、聞かされて育った。

「お母さんが、あんなに美人なのに・・この子は、
誰に似たのだろうね・・・」

という、口さがない親類や従業員の言葉で
自分は女という武器が著しく、
スペックが低いということを、
理解していた。

次第に無口になり、人の陰に隠れるようになった。

若い女の子たちは、
宝石のように美しい錦鯉。

天音は、岩陰に潜む、黒っぽい鯉だと自分を考えていた。

そもそも黒っぽい鯉は、
男の目には留まらない。

それでも、いっぱしに恋愛幻想の夢を、見たこともあった。

昔、街の占い師に
「あなたには、恋愛運はないですね」と言われて、
少しばかり、ショックを受け、

次に「ああ、やっぱり」という
覚悟ができた。

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