妖怪ホテルと加齢臭問題(天音と久遠)

森の精霊


旅館の廊下で、
久遠は祖母の美人画を、眺めていた。

柳のようにたおやかで、
斜め横向きに、うつむいている。

「この人、森の精霊みたいだ。
天音ちゃんと、雰囲気が似ている」

森の精霊ねぇ・・・

どのようにリアクションしていいか、わからない。

「この人みたいに、
着物で写真撮りたいんだけど、
絶対、映えるから」

久遠は「このモデルは君しかいない」という視線を、天音に投げた。

天音はいやいやと、首を振って

「私はモデルでは、ないので・・
それに、顔出しはちょっと」

「後ろ姿でいいよ。
ヨーカイ旅館(ホテル)にふさわしい、ミステリアスな感じに
したい」

<販売促進>
<宣伝効果>
別のマジックワードが、浮かぶ。

天音は、急いで納戸にある桐のタンスを開けた。
母の留めそで、確か、
裾模様にもみじが散らされているのが、あったはず。

手早く、数本の帯と着物を選んだ。

「羽織るだけでいいですか?」

そう言いながら、
もみじが美しく見える、窓の障子を開けた

天音は、打掛風に黒の留めそでを羽織り、背中をむけて
うつむき加減に、障子のさんに
手をかけた。

「あーーー、靴下脱いで・・
裸足がいい、つま先を出して」

久遠が、アングルを決めながら、指示をした。
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