男装獣師と妖獣ノエル ~騎士団で紅一点!? 幼馴染の副団長が過保護です~
2章 ラオルテと第三騎士団
 セドリックは出発する前、別荘で待機していた三人の若い騎士を、ラビに簡単に紹介した。

 赤茶色の短髪で、一番若い顔立ちをした小柄な騎士がテト。大柄だが身体は引き締まっており、謙虚そうな薄い緑の瞳をした目尻に薄い笑い皺があるサーバル。別荘を出たところで早速煙草を口に咥えたのは、年長組の三十代のヴァンだった。

 彼らは、以前からセドリックに、ラビの話しを聞かされていたらしい。改めてセドリックから紹介を受けると、物珍しそうにラビの様子を見やった。三人は副団長に促されるまま「よろしくラビ」と陽気に言い、ラビは「どうも」と愛想の一つもない挨拶を返した。

 ラビは、セドリックとユリシスと共に馬車に乗り込んだ。ノエルはラビの「オレの膝の上とか踏んでくれてもいいからッ」という心配を無視し、馬車の屋根の上を陣取り、初夏の穏やかな日差しを浴びながら『特等席だぜ。問題ない』と眠そうな顔で答えたのだった。


 ラオルテまでは、五日間の長旅になった。

 途中で馬を休ませ、村や町がない時は、見張りを立てて馬車の中で仮眠を取った。ホノワ村から外に出た事がなかったラビは、金髪金目と目立ってしまう容姿を考えて、はじめは必要以上に外には出なかった。

 しかし、さすがに馬車旅で痛む腰に苛立ちがピークを迎えると、一旦外に出て、馬車の上で呑気に寝ているノエルを恨めし気に睨んだりした。


 ヴィルドン地方は、山脈に囲まれた広大な土地で、商業の盛んな大きな中心町を超えると高原が広がった。急ぎ走らせた馬車がラオルテの町に到着したのは、それから二日後、ホノワ村を出発して五日目の深夜を回った頃だった。

 ラオルテの町は、東に巨大な氷山を持った平原地帯にあり、五メートルを超える木の防壁の中に人々の暮らしがあった。
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