可愛い呪い


「子供の頃は可愛かった」


と母によく言われる。


そして、母は必ず私の子供の頃の笑えるエピソードを話し始める。


その話をされるたびにまるで、


今の私が可愛くないんだよ。


と言われているように感じてしまう。




母はそういうつもりで話している訳ではないのは分かっている。




でもたぶん、そうだ。




私は、昔に比べると可愛くない人間なんだ。






子供の頃は、周りに可愛がられて育ち、


近所のおばあちゃんや親戚などに
「可愛い」って言われてきた。



今も、昔のように「可愛い」と言われる。


それは、昔の「可愛い」とは意味が違うような気がする。


今言われる「可愛い」は確かに嬉しい。


ちやほやされるのが嬉しかった。



でも、たくさん言われていたら、外見だけ、中身がないと言われているように感じて、なんだか薄っぺらい人間だと言われてるみたいだった。



それに今の「可愛い」はきっと、20代で若いうちだけだ。



肌のハリ、髪のツヤ、目の輝き

全てが今1番良い状態だ。



これから歳を取るとシワが出てくるし、


太りやすくなったり、美容に費やす労力も増える。



老化するということはそういうことだ。



しかし、老化はそこまで気にしていない。



きっと、なによりも恐れていることは、失うことなのだ。





今、正直「可愛い」とよく言われる。



それは、これから老化するにつれて失われていくものだ。



どんなに頑張っても、老化は止めることができない。



時間とともに進んでいくものだ。






世界3大美女のクレオパトラは、
自殺するとき、死後も美しくいられる死に方を選んだらしい。


という話を突然思い出す。



私も今のまま死んだら…とか考えてしまう。




でも、美貌のために死ぬほどではないな、
と少し考えてから気づく。



本質的には「可愛い」が失われることが怖いのだ。



そもそも、一体「可愛い」ってなんなのだろう。



辞書で調べてみると、
「小さいもの。弱いもの。無邪気」と出る。


子供が「可愛い」って言われてるのをよく聞く。


ほとんどの子供が辞書の条件に当てはまる。



つまり、子供の「可愛い」は、辞書通りのようだ。



私が今言われている「可愛い」は少し違った意味のようだ。



それは、男性に言われることが多いというところ。



顔が好みの男性を見ると、カッコいいと思うのと同じで、異性の外見が相手の好みだと「可愛い」のだろうか。




辞書にあった、「小さいもの、弱いもの」は
どちらも、守りたくなる。



男性は女性を守る役割が昔からある。



ということは、守らなくてはならない存在に対して「可愛い」と思うのだろうか。




男性にとって、守らなくてはならない女性とは、子孫を残すのに必要な存在…?




私は、多くの男性から子孫を残したいと思われているということなのだろうか。



どうして、人間は外見が良ければ子孫を残したいと思うのか…



見た目だけより、頭の良さなどの中身が良い人間が増えた方が生存に有利なはずなのに…




どうして外見にこだわる人間が多いのか。



と、しばらく考えていたらどっと疲れた。



こんなこと考えているなら、もっと幸せになれるようなことを考えた方がいいのに。



今日はもう寝よう。




私は、「可愛い」の呪いにかかっているのかもしれない。
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