【短編】地味男が同居したら溺甘オオカミになりました。
キス、そしてキス。
「……ごめんって、何?」

 やっとのことでそう呟いたのは、あれから数時間後。
 午後の授業も終えて、学校からも出て、一人で食材の買い出しにスーパーに来ていたときだった。

 キスをされた後のことは記憶がハッキリしない。


 何だか気まずい感じになってそれぞれの教室に戻った。

 授業も受けたはずなんだけれど、頭には入ってこなかった。

 でもそれは、キスの余韻でドキドキフワフワしていたとかじゃなくて……。


「なんか、モヤモヤする……」


 ごめんなんて言うなら、はじめからしなきゃ良かったのに。

 申し訳ないって思うようなキスを私の初めてのキスにしたの?


 ……そう、初めてだ。
 ファーストキスだったのに。

 ……でも、そのファーストキスを私は村城くんにあげちゃったんだよね?
 いくらどうすればいいか分からなかったとはいえ、何をされるか予測していたのに……。


 それはどうしてなのかって考えたら、案外すぐに答えは出た。

「……だって、嫌じゃなかったから……」

 そう、嫌だとは思わなかったんだ。


 多分、もう私は結構村城くんのことを好きになりかけている。

 ただ、顔が好きだからなのか中身も見て好きになっているからなのかが分からなくて、ちゃんとした答えが出せないだけ。
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