勇者の幼馴染という負けポジションの妹の身代わりになったつもりで、つもりだったのに何故か執着溺愛されちゃった私の誤算。
 勇者の幼馴染の女の子というのは、物語の関係上必要だけどとても悲しい存在だ。

 旅立ってしまった彼の郷里への思いを語る時に、ただなんとなく懐かしさを持って回想されるだけの人物であり、彼が魔王を倒した暁にはその功績を認められて結婚を許される聖女兼お姫様から見ると、まったく勝負にもならない当て馬っぽい関係性で役目は呆気なく終わってしまう。

 私は四歳の時、唐突に産声をあげて泣く可愛い妹の赤ん坊だったジーノが、その可哀想な立ち位置に居ることに気がついてしまった。早い話が、私は前世で大好きだった小説の世界に生まれ変わった転生者だった。

 けれど、その小説の中では名前すらも一回も出て来ることのない、勇者の幼馴染の姉というモブ中のモブだった。

 まるでこの世界に舞い降りた天使のような妹の顔を見て、決意した。こんな幼気な可愛い子を、絶対に不幸にしてはならない。

 そうか、これから起こる事を知っている私が、妹の身代わりになれば良いのか。そう思った。

 だって、ここは小説の世界なんだから前世で本が擦り切れるほどに読んだ小説の通りに進んでいくはず。そして、私はそのストーリーを既に知っている。
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