視えるだけじゃイヤなんです!
みんないっしょに




「おはよ、ここみ!」
「咲綾!」
 夏休みが開けて、今日から二学期だ。
 あたしはいつもの通り、学校への道を咲綾と歩く。

「退院できてよかったね、咲綾!」
「よくないよ~! 結局夏休みまるまるかかっちゃってさ、どこにも遊びに行けてないんだもん! 損した気分だよ!」
「あはは、そうかもね」

 なんてことのない会話がうれしい。心なしかまわりの風景もキラキラ輝いているように見える。


 透くんは目を覚ましたと言っても、さっきまで死にかけてた人だもん。そうそう簡単に退院ってわけにはいかなかった。

 あたしは夏休みの間中、結局倉橋家に入り浸ってしまった。透くんのことも気になってたし、うなぎを呼べるようになったとはいえ、まだまだ訓練する必要があると覚さんからもお達しをもらってしまったから。

 うなぎは相変わらずあたしの肩の上にちょこんっと乗っている。
 あたしはどうやら、透くんが作ってくれた狐の窓の制限をぶち破ってしまった、らしい。だから本来はお化け見放題プラン発動中なんだけど、うなぎが窓の代わりをしてくれてるみたい。視よう、って意識しないと視えないから、それはほんとにラッキーだった。

 普段からお化けとか視たくないもん。怖いものは怖い。何回見たってなれないし。

 そんなこんなで夏休みも無事に終わったけれど、結局、透くんにはまだ会えてないんだよね……。

 いつになったらまた会えるのかなあ、なんて考えて、ちょっとだけ空気が重くなってしまう。

「ここみ? どしたの?」
「ごめん、なんでもない! さ、学校行こ!」

 あたしが気を取り直して、歩き出したときだった。
< 80 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop