厄介なイケメン、拾ってしまいました。
5 ご奉仕
「あ……ん……いたっ」
「あー、ごめんごめん」

 私は今、ペットからのご奉仕を受けている真っ最中である。
 それは、マッサージ。
 ベッドの上にうつぶせになった私の上に、前足……もとい、両手を置いて、ワンコのふみふみ。

「ふみふみするのは猫でしょ」

 蓮くんはそう言ったけれど、どっちでもいい。
 背中が気持ちいい。しびれるくらいに。

 それから彼の手は私の首元へ。
 ふと手が顔の横について、思わずくんくんと匂いを嗅いだ。

「何してるの?」
「イヌすい」
「それも猫でしょ」
「もう、ペットは黙ってて」
「分かった」

 シンとする部屋の中、彼のマッサージに癒やされる私。じんわり温かい彼の手が、さらに気持ちよさを増幅させる。
 マッサージ師とか、いや、パン屋になったほうがいいかもしれない。

「はいー、おーわり」

 最後にふくらはぎをもみほぐしてくれた蓮くんは、そのまま私の背中にペタリとくっついた。

「な、なに!?」

 思わぬ行動に、素っ頓狂な声を出してしまった。
 蓮くんは私の背中で、もぞもぞと動く。

「頑張ったから疲れちゃったにゃ〜」
「はぁ?」
「俺、ペットなんでしょ? 何動揺してんの?」

 ニヤリと笑うカレ。

「べ、別に動揺なんて……」

 してない、はずがない。
 旦那以外の男性に、こんなにペタリとくっつかれたのは久しぶりだ。
 というか、近い、彼はいつも、近い。

「心臓、ドキドキ言ってるけどね」
「これは暑いから!」

 振り返りギロリと彼を睨むと、彼は同じ目を返してくる。その瞳に映った私は、泣きそうな口元をしていた。
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