厄介なイケメン、拾ってしまいました。
6 お散歩
 翌朝。
 何事も無かったかのように、蓮くんは私の前で朝ごはんに出した食パンを頬張っていた。
 ただの、素の食パン。
 それを美味しそうに頬張りながら、ときどき水(水道水)で喉を潤している。

「紗奈、今日の予定は?」
「特にない。日曜だしね」

 私は自分用に作ったトーストにブルーベリーのジャムをつけながら、彼の質問に答えた。

「あのさ、」

 何?
 ジャムならやらないよ!
 これ、老舗の高級ジャムなんだから! ……もらいものだけど。

「旦那さんと電話とかしないの?」

 続きが思いもよらない内容だったから、思わずジャムを落としてしまった。
 そのお皿に落ちたジャムの粒を、「イタダキ」と彼は指ですくい上げ、ペロリと頬張る。

 私はため息をこぼす。

「しないよ。電話なんて迷惑だし」
「ニ週間も一人にされて、寂しくない?」
「別に。慣れちゃった。元々、出張多い人だし」

 私は左手にキラリと光る指輪を見つめた。

 これがあれば、私と彼は繫がっていられる。
 だから……。

「ね、出かけようよ」
「え?」


 唐突な提案に戸惑っていると、蓮くんは人懐っこい笑みを浮かべる。
 ああ、イケメンで、爽やか。
 目の保養なら、丁度いいのに。

「お散歩。俺、ペットだよ?」
「あー、はいはい」

 自分で言っといて何だけど、彼をペットにしてしまったのは、絶対に間違いだった。
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