恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
1、叔父にレンカノを頼まれました
「美鈴、もうとっくに六時過ぎてるけど大丈夫?」
隣の席にいる同期で高校時代からの親友でもある咲が、私に目を向けた。彼女は白井咲、二十七歳。
 背は百七十センチ、アッシュブラウンのセミロングの髪に涼やかな目をした仕事ができる彼女は祖父が元外務大臣で父も国連大使というお嬢様なのだけれど、とても気さくで優しい。
「え? もうそんな時間?」
 パソコン画面から顔を上げて掛け時計に目をやると、午後六時二十二分だった。
「マズい、早く帰らなきゃ」
 慌てて書きかけのメールを打っていたら、向かい側の席にいる木村くんが私に声をかけた。
「なにか途中の仕事があれば引き継ぎますよ、芹沢さん」
 彼は木村優吾、二十六歳。
 私の一年後輩の彼は百八十センチの長身に、茶髪で短髪のウルフカット、それに中性的な顔立ちをしたイケメンで、性格もよく社内の女性社員に人気がある。
かくいう私は芹沢美鈴、二十七歳。独身で、彼氏もいたことがない、枯れている女。
 
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