恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
7、三人で過ごす休日
「すごい、大きい。このジンベエザメ、歯が八千本もあるんだって」
大きな水槽で泳いでいる体長五メートルほどのジンベエザメを眺める歩の肩に手を置き、私はふふっと笑った。
「こんな大きいのにエサがプランクトンていうのが不思議だね。人間をぱっくり食べちゃいそうなのに」
 十二月中旬の週末、私と歩と一条くんの三人は北陸にあるとある水族館に来ていた。
 もう午後五時半を過ぎていて、外は真っ暗になっている。
 周囲にお客さんはひとりもいない。
「エサやりしてみる?」
 一条くんが屈んで歩に声をかけると、弟がコクッと彼の目を見て頷いた。
「うん。いいの?」
『いいの?』と大人の都合を聞くところが歩らしい。
「もちろん。せっかく来たんだから、エサやりしよう」
 歩に優しく微笑むと、一条くんはそばにいた水族館の飼育員に目を向けた。
「すみません。エサやり体験したいんですけど」
 一条くんが飼育員にお願いすると、私たち三人はバックヤードに連れていかれた。
 
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