断罪された公爵令嬢は元婚約者の兄からの溺愛に囚われる

9.夏の終わり、季節の移ろい


 花嫁支度が忙しくなってきた、夏の終わり。金木犀の甘い香りが漂って、季節の移り変わりを感じる。
 ここ最近の楽しみは、週に一回ジャックさまが屋敷に訪れてくださること。本当はお互いデートもしたいのだけれど、現在もイーサン元第二皇子は見つかっていないから。
 そのため花嫁支度も、安全を考慮して、屋敷で出来る限り行っている。

 しかし今日は、ドレスの試着があるので、皇城に行かねばならないのだ。
 あれからも警戒して、護身術の稽古も続けている。近衛兵が警護してくださっているから、問題ないと思うけど、護身用の短剣も太ももに括りつけた。念には念をね。

 皇城へ行く支度が終わると、愛猫のルナが、ひと鳴きする。

「にゃーん」
「お見送りしてくれているの? ルナ行ってくるわね」
「にゃうーん」

 甘えた声で、足にすりすりと身体を擦り付けてくる。

「そ、そんな可愛いことすると出掛けられなくなるじゃない……!」

 衝動的にしゃがみ込んで、ルナを抱っこしようとすると、侍女のリラがサッと遮った。

「ヴィクトリアお嬢様、馬車が待っています」
「わ、わかったわ……」

 仕方なく、ルナに背を向けて、皇城から手配された馬車に乗る。
 登城するのも久しぶりだ。ジャックさまに会えたらいいけど難しいでしょうね。

 そんなことを考えていたら、どこかから、猫の鳴き声が聞こえる。
 まさかと思って、馬車の上に備え付けてある荷物棚を見ると、そこには黒猫で黄金の瞳の……。

「る、ルナ!? どうしてここに!?」

 屋敷と馬車の戸締まりもしっかりしているし、近衛兵も警護しているのに、どうして付いてきてしまったのだろうか。引き返すにも、皇城に近いところまできているので、指定の時間が過ぎてしまいそうだ。

 飼い主の迷いなどお構いなしで、ルナは、可愛いおててで顔をかいて、呑気そうな顔で鳴くのだった。

< 27 / 53 >

この作品をシェア

pagetop