断罪された公爵令嬢は元婚約者の兄からの溺愛に囚われる

11.にゃ〜ん

(ジャック視点)

 今日はヴィーが登城するというのに、妙な足止めを喰らい、静かに苛立っていた。
 近衛兵舎でボヤ騒ぎ。皇太子として父帝と共に近衛を管理しているため、事態報告を受けない訳にもいかない。耳を傾けると、昼間にも関わらず、何故か蝋燭を倒してしまったというお粗末な内容を伝えられた。人にも物にも被害は出ていない。床と壁が焦げただけだ。

 そんなことしていたら、ヴィーを迎えに行こうと思っていた時間を過ぎてしまった。俺にだけ表情をコロコロと変えるあの少女は、初めて欲しいと思った唯一。
 今までは、自由以外何でも与えられる環境にいたからか、物欲を感じることはなかった。 その反動か、ヴィーへの執着は、我ながら狂っている。少しでも油断をすると、無理矢理にでも鎖で繋いで、閉じ込めてしまいたくなってしまうほど。
 他の誰にもその愛らしい表情を見せたくはない。独り占めしたいからだ。

 しかしそんなことをしては、折角俺に向いている良い感情が、台無しになる。そう思うのに、直ぐ煽ってくるから、度々理性を失いそうになるが、せっかく婚姻出来る状況になるまで働いたんだ。我慢も時には必要と心に決めている。

ようやく、ヴィーの元に向かえると一息着くと、今度は側近のヨルダンが執務室に現れる。

「皇太子殿下、至急ご報告があります」
「今度は何事だ」

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