もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
〝聖女〟

「まあ……やはり煤の森の魔女は恐ろしい存在なのですね」

 上品に口もとを隠しながら言うと、ラベーラは誰もが守ってやりたくなるような儚い表情を浮かべ、不安げに目を伏せた。

「セニルースからも兵をお貸しできたらよかったのですけど……。そうなると、リンデンの民が不安に思うかもしれないでしょう? 魔女の居場所は、リンデンに近いですから」

 小鳥のさえずりにも似た甘く軽やかな声を聞いても、ラベーラの婚約者であるアルドは少しも心を動かさなかった。

 アルドは政略結婚の相手として契約関係にあるだけのラベーラを、注意深く見つめてほころびを探そうとしている。

< 185 / 477 >

この作品をシェア

pagetop