初恋の味は苦い

男畑の紅一点

パソコン右下にチャットが飛んできた通知が入る。

「これ、さっき言ってたやつ!送っといて!」

はいはい、と思いながら開こうとするとまた別の人からも飛んでくる。

「さっきの、電話ってした?」
「間違ってた、やっぱこっち最新版!」
「ミーティングって何時から?」

次々と私に降りかかってくるのは、営業事務が私一人だからである。

いや、先日私ともう一人、二人で回していたのにあろうことか産休に入られる前に突然の入院。引き継ぎなどほぼ行われてなかった。

「留守電にコメントしてメール送っておきました」
「最新版はこちらなので、送っておきますね」
「14時からです」

そう返事を打ちながらふと考える。

結婚を機に転職していった同期。
仕事を苦に辞めた同期。
産休・育休に入った先輩。
職場復帰したものの時短勤務の先輩。
部署に恵まれ在宅勤務の先輩。

男ばかりのこの職場だけど、確かに一定数女性もいたはず。

なのになぜ・・・。

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