結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~

ナード糸






 ナード糸を卸しているレッドロックス商店に到着すると、青いドアをギイッと音をたてて入る。ここはセイリュースの街の元締めのような店で、その一人息子のジミーはソフィアと気の合う友達だった。

「ソフィア、この前のレース編みのクロスは評判が良かったよ。また仕入れたいから何点かつくっておいてくれ」
「本当? 良かった、また同じものをつくっておくね」
「あぁ、大きさはあれと同じで、模様を少し変えておくといいかもな」
「わかったわ」
 
ジミーはソフィアの作った作品の買取りもしてくれるし、仕事の上の付き合いでも何かと融通をきかせてくれていた。

「ソフィア、ところでナード糸だが今週も渡せるのは二束になる。それとも他の糸にするか?」
「……っ、お願い。ナード糸でないと、私たちの商品は売れ行きが厳しくなっちゃうから」
「まぁ、ソフィアならそう言うと思っていたよ。ほら、今週分の糸、二束は確保しておいたから」
「ジミー、来週からは三束にして欲しいのだけど、できそう?」
「うーん、他にもナード糸を欲がる客はいっぱいいるからな……。最近、入荷量が少なくなっているから難しいんだよな」
「二束でも、ありがたいってことね。本当にいつもありがとう」

 本当はナード糸の仕入れを増やして、手芸品をもっといっぱい作りたい。購入したいと言ってくれている人はたくさんいるのに、肝心のナード糸の入手が難しい。

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