結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~

リヒト

 夕食にはトマトソースのパスタを用意すると、リヒトは口の周りを赤くしながら美味しそうに食べている。本当はソースにひき肉をいれて、チーズをかけるといいと聞いたけれどその余裕はない。

 はぁ、といつものようにため息がでる。

 リヒトの命が一番大切だから、中絶させられる前に家を飛び出して来た。正直、ここまで身体を売らずに済んでいるのは幸運な方だと思う。

リヒトの柔らかい髪を撫でながら、この紺碧の髪と瞳は、やはりアルベルトにそっくりだと思わされる。六年ぶりに彼に会ってみると、益々そう思ってしまう。ジミーははっきりと言わなかったが、気がついているだろう。二人が一緒になると、誰が見てもリヒトがアルベルトの子どもだとわかってしまう。

 今さら、アルベルトのことを恨むつもりもない。捨てられた当初は復讐することも考えたけれど、今はリヒトと穏やかに暮らしていくことができれば、それでいいと思っている。

 その二人の生活を守るために、いっそリヒトを連れてこの街を離れようかと思うけれど、そんなことをして普通に生きていけると思えない。これまでに築いて来た人間関係もあるし、やはり海辺のセイリュースで過ごしたい。

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