真面目系司法書士は年下看護学生に翻弄される

空き巣



部屋の中に入るまでタクシーを降りて見守ってくれている林さんに、優菜は頭を下げた。

アパートのドアを開けた瞬間。

「ぎゃぁ!」

思わず叫び声を上げてしまった。

部屋の中が荒らされている。泥棒、空き巣だ。

私の声を聞いて急いでアパートの2階まで駆け上がってきた林さんが、部屋の惨状を見て腕を引いて優菜を自分の後ろに引っ張った。

私の声に驚いてか隣の住人がドアを開けて覗いてきた。

「うるさい!夜中なんだから静かにして」

私はすみませんと頭を下げた。

中に誰もいないことを確認して、いったん二人とも部屋に入った。

「警察呼ぶ前にあまりいろいろと触らない方がいいと思うから」

林さんは部屋の中を見て何があったのか察したらしい。
大丈夫?と林さんは私を気にかけてくれた。

「林さんすみません警察は呼ばないでください。盗まれる物なんて、うちにはありませんから」

スマホに手をかける林さんを急いで制した。

「駄目だよ。何も盗まれてなくても一応警察には言わなくちゃいけない」

林さんはしっかり目を見て優菜に言いきかせる。

「でも、通報しないでください……」

林さんは、なんでそんなに嫌がるんだと少し困ったような顔をした。
< 10 / 71 >

この作品をシェア

pagetop