真面目系司法書士は年下看護学生に翻弄される

新たな生活




兄と一緒に住んでいる築40年の一軒家は、工場の社長夫婦の敷地内に建つとても古い民家だった。
空き家だったので、兄は自分が今まで住んでいたアパートを引き払い、ここへ引っ越してきたのだった。

「迷惑かけてごめんなさい」

そう言うと、お互い様だと兄は苦笑いした。

ここへの引っ越しは、もちろん優菜と赤ん坊のためで、工場の社長さんもぜひここを使ってほしいと兄に提供してくれたらしかった。

家の所々壊れた場所があり、それを兄が修理した。トイレや風呂場は新しいものに取り替えてくれた。

「職場が近くなったから通勤が楽だ。家賃を払わなくていい金もかからない」

優奈と子供の面倒は俺が見ると自信満々に兄が言ってくれた。

昔から兄は面倒を背負い込むタイプだった。
自分のことは二の次でいつも人のために何かを命がけでやっているような、義理人情に厚い人だった。

そのせいで妹の家に泥棒に入るような真似までする、無鉄砲なところもあったが今となってはそれも頼もしい気がしてくる。

この家は部屋数があったので優奈と赤ん坊が十分暮らせる広さだった。
家賃はタダ同然で、緑が多く空気のおいしい田舎にのんびり暮らすことができる。
お腹の子供にも良い環境が与えられるなと嬉しく思った。


兄は工場の社長さん夫婦から我が子のように可愛がられていて、社長の奥さんが甲斐甲斐しく優菜の世話をしてくれた。そして社長夫妻から兄は工場を救った救世主だと教えてもらった。

子供がいないご夫婦だったので私が出産することを初孫ができるみたいにと、ても喜んでくれた。
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