真面目系司法書士は年下看護学生に翻弄される

怒涛の出産



出血があったのはちょうどお腹の子が8か月に入った時だった。
赤ちゃんの体重は推定1480グラム、前置胎盤だった。

「前置胎盤」とは、胎盤が正常より低い位置に付着してしまい、そのために胎盤が子宮の出口の一部または全部を覆っている状態だということ。妊娠中や分娩中の多量出血が問題となり、いわゆるハイリスクな出産だ。


「仮にも看護師のあなたが、なんでこうなるまで自然分娩を考えてたの!」
周りの医師にとめられるくらいに看護師は怒っていた。
前置胎盤であることは知っていたが。無理をしなければぎりぎりまで自宅で過ごせるときかされていた。

まさか絶対安静の状態で過ごせるのならという条件が付くとは思っていなかった。
帝王切開になることは聞かされていたがそこまで大変な状態だったなんて知らなかった。

精神的にもしんどかったし片親だし引っ越しもあったし……それは……言い訳だった。

看護師試験やこれからの生活、やらなければいけない事は沢山あった。けれど自分が一番考えなければならなかったのはお腹の子供の事だった。

看護師に怒鳴られ、NICU(新生児特定集中治療室)のある大きな病院へ、ヘリで優菜は搬送された。

1480グラムはそれくらいだろうという推測に過ぎず前後200グラムの差はでるらしい。
優菜の体が無事でも、赤ちゃんは低出生体重児、早産児だ。新生児ICUへ入ることは確実。そこがしっかりケアできる病院でなければならない。

まだ早いまだ駄目まだ出てこないで優菜は必死に願った。
医師の「産みましょう」と言う言葉を聞く前に優菜は意識を意識を手放した。
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