真面目系司法書士は年下看護学生に翻弄される


兄は朝陽の父親が林さんだと以前から知っていたようだった。話し合いをするから二人をマンションに泊めると言う林さんに対し、二つ返事で OK を出した。

林さんがよく使っているという和風居酒屋のテイクアウトの料理を買った。途中でドラッグストアにより、朝陽が食べられそうなものを購入する。

林さんが朝陽の父親。
林さんが朝日の父親。
私は林さんと子供を作るような行為をしていた。
私は林さんと恋人同士だった。
私は……

なぜ自分だけ教えてもらえなかったのか、林さんと出会って2ヶ月近く経っている。今までどうして何も言ってくれなかったのか。

「たぶん2時間ぐらいはかかるだろうから、食事を済ませて適当に寝ていてくれても構わない」
そういう彼が少し苛立たしげだったのは、どうしても今日を片付けなければならない仕事があったからだろう。
マンションの部屋に入るなり林さんは1階の事務所へ戻っていった。

林さんのマンションに初めて入った。
何でも好きに使っていいといわれたので、なんでも遠慮せずに使った。朝陽と一緒に入浴を済ませ夕食をとった。

腹立たしさも相まって、家探しするかのようにクローゼットを開け、システムキッチンの収納をみる。

わからない。なにか思い出せるものはないかと確認するが寝具や家具に至るまで記憶にはなかった。引っ越してくる際に新しいものに買い替えたのかもしれない。

かろうじてキッチンの高価な調理器具は私が動画にあげている物だった。確かに私が使っていた物だろう。そして毎晩これで食事を作り林さんに振る舞っていたのかもしれない。

朝陽は見慣れない部屋に興奮気味で嬉しくて走り回っている。ソファーとテーブル。テレビと本棚。観葉植物やクッションなどはない極めて簡素な室内だった。

リビングに続いて和室がありそこの押し入れに客用の布団があった。勝手に敷いた。朝陽が汚してしまっては申し訳ないのでバスタオルも敷いた。パジャマに着替えた朝陽は布団の上をゴロゴロしながら嬉しそうにキャッキャ言っている。これだけ動き回ればすぐに寝付くだろうと思った。

林さんは確か40手前だといっていた。私との年の差は17歳。彼とベッドを共にしていたのだろうか?急に顔が赤くなった。
想像したら恥ずかしくなる。正直自分は出産したくせに記憶がないので処女のままだった。キスもしたのだろうか?何回くらいしたのだろう。

気がつくと朝陽は畳の上に、そのままうつ伏せになって寝てしまっていた。抱き上げて布団に移し電気を消して隣で横になった。
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